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ワイワイタイランド.COM >  コラムカテゴリ >  サワッディー!お隣のタイ人 >  日本で暮らすのは運命だった

日本で暮らすのは運命だった

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関根ルタイワン(ジャイ)さん

1992年来日。3年前にオープンしたキングスコータイの責任者であり、経験豊かな施術者でもある。ジャイさん自身のリフレッシュ法は、高尾山に行くこと。緑にふれ、お寺を訪れることで元気になれるのだとか。1男1女の母。

キングスコータイはリピーター率が非常に高い、アジアンリゾート風のゴージャスなスパ。都会の喧噪とは別世界の優雅な個室で、タイ古式マッサージや岩盤浴のコースが受けられる。
http://www.king-sukhothai.jp/
言葉も文化も知らない
日本で暮らすのは運命だった

私のチューレン(ニックネーム)はジャイ。ジャイとはタイ語で「心」の意味です。本名はルタイワンといいますが、これは「金の心」という意味。私の父がつけてくれた名前です。日本に来たのは日本人と結婚したからです。来たばかりの頃は言葉も文化もわからなくて、地球が止まってしまったような思いをしていました。でも、これは運命。自分の人生はすべて運命によって決められていると思っています。昔から海外に行きたいとは思っていたけれど、憧れていたのはスイスとかヨーロッパの国。日本に行きたいとか、日本人と結婚したいとは全く考えていませんでした。だけど逆らえない。この道しかないんだよ、と神様が決めたみたい。

大学1年のとき、私の父が経営していた会社が、不景気でつぶれそうになりました。父は仕事のパートナーと一緒に有名な占い師さんに相談に行ったんです。会社に関しては、運命に逆らってもしかたない。引っ張っても倒れてしまうことはある、と言われたそうです。すると占い師さんは、父が頼んだわけではないのに、私のことを話し始めたそうです。「これまで苦労してきたけれど、これからいいことがありますよ。あなたのお子さんは3人ともいい子だから心配しないで。でも一番親孝行してくれるのは、娘さんだね」と。その他にも私のことをいろいろ話したそうですが、今振り返ってみると、私の人生は占い師さんに言われたとおりになっているんです。外国人と結婚するとか、海外に住んで、大きな病気をするとか……。去年の8月、私はガンと診断されました。半年間病気と闘って、3月にやっと治療が終わりました。手術の後の化学療法が一番辛かった。抗がん剤が終わると、その後は4ヵ月間、仕事をしながら毎日放射線治療に通いました。仕事はやらないといけない状態ではなかったけれど、仕事をやることで自分の価値を見つけることができたんです。私は死んじゃいけない、私が元気になるのを待っている人がいる、私はお店を守らなくちゃ! ガンと診断されて、最初は希望を失ったけれど、その思いがあったから乗り越えられたし、周りの人の支えや励ましがあったから、こんなにも元気になれたんだと思います。
中途半端なことは嫌い!
目標のためなら死んでもいい

多分、私は仕事しすぎたのだと思います。責任者ですから、すべてのプレッシャーがかかってくる。どう店を守るか、どうしたらお客さんに満足していただけるか、どうしたらスタッフたちの心を1つにしてベストなサービスを提供できるか。どこの会社でもそうだと思いますが、いい形にしていくのは時間がかかります。でもあきらめなければ、きっといい結果が出ると信じていました。そしてやっといい状態になったとき、私が倒れてしまったんです。でも入院中もスタッフが私の分までがんばってくれたおかげで、リピーターさんが離れることもありませんでした。

今は1ヵ月に一度通院しています。以前と同じような状態というわけにはいきませんけれど、元々私は心が強いのかなーと思います。やっぱり仕事が好きなんです。私は中途半端なことが嫌い。何かやるなら絶対いい結果が見たい。そのためなら自分の命をかけてもいい、死んでもいいと思ってる。だから私はガンになっちゃったんだと思います。

みんな笑っちゃうと思うけれど、子どもの頃、将来は宇宙飛行士になりたいと思っていました。今でも、お金持ちなれたら死ぬ前に宇宙旅行に行きたい。基本的に私は多分お金持ちになれないタイプだし、なりたいとは全然思わない。お金はただ生活のために必要なもの。一生懸命がんばれば、お金はなんとかなると思うんです。ただ、がんばったことの結果が見たいだけ。一生懸命仕事したことで、お客様が喜んでくださること、それが私の幸せなんです。でも、宇宙旅行には行きたいな(笑)。
タイをガイドしたことから開けた
マッサージ店経営者への道

お店はオープンして3年。私はこの世界に入って10年ほど経ちます。お店を始めるきっかけは、本社の社長がタイ旅行にいくことになり、友人経由でガイドを頼まれたこと。始めは断りました。プロではないし、子どもたちとタイで休暇をとることになっていたし、その社長さんのことも知らないし、体調もよくなかったから。でも、どうしてもといわれ仕方なく引き受けましたが、受けたからには責任をもってやろうと思いました。一生懸命本を読んで勉強もしました。ガイドをしたのは4日間。毎日5時に起きて、7時にはホテルに迎えに行って……、自分のプライベートは全然ありませんでしたね。ガイドさんって大変なんだなーと実感しました。私ひとりでは自信がなかったので、弟も手伝ってくれました。その弟は去年亡くなってしまいましたが……。

ある日、高級スパにご案内したんですが、社長はそこをとても気に入り感動していました。そして日本にもこんな高級リゾートスパを作りたい、世界一働く日本人の疲れを癒してあげたい、と思ったそうです。しばらくして、社長から連絡がありました。スパをやりたい。あなたの思い通りにしていいからやってくれないかと。今お店で使っているものは、すべて自分で選んで買ってきました。大変でしたよ。でも弟や家族が一緒に買いに行ったり、応援してくれたことはすごくいい思い出になっています。
タイのすばらしい文化を
もっと知ってもらいたから

一番難しいのは経営。自分一人でいい結果出すのは簡単。でも、それぞれ違う環境で育って来たスタッフに、どうやって私と同じような気持ちでがんばってもらうか、それはものすごく難しいことです。みんな機械じゃない、心を持った人間です。どうやったらみんなが納得して、気持ちよく仕事ができるか、私も努力しなくてはいけないなと思います。

おかげさまで男女ともリピーターさんが多くて、「次は彼女を連れて来ます」と言ってくださる男性客の方もいます。今日も初めてのお客さんが、「お友達にすごくよかったと勧められたから」といって予約してくださいました。それが一番うれしい。お店をオープンしてから、いくつも大きな津波にあたったけれど、今、それが終わったような気がする。いろんなことを乗り越えれば、こんな晴れる日が来るんだなと思います。まだまだですけれどね。まだもっともっといいお店にしたいですから。

今、娘は高校2年生、息子は小学6年生。二人ともタイの両親の家で暮らしていますが、娘は日本の大学を希望ししているので、もうすぐ日本に戻ってきます。子どもは自分の手で育てたかったけれど、日本の環境だと、仕事しながら子育ては難しくて、両方やるとどちらも中途半端になる。弟もお姉さんの替わりに育ててあげるからと言ってくれました。2人ともいい子に育ってくれました。お姉ちゃんは勉強が好きで、奨学金をもらって勉強しています。お母さんも大変だから、しっかりがんばろうと、思ってくれるのがすごくうれしい。それから、これからこの店をもっと大きくしたい気持ちがあります。元々ヘルシー料理を作るのが大好きで、マッサージの後に、お客さんに料理を楽しんでもらいたい。……そんな店ができたらいいなあって。

タイは私にとって大好きなふるさと。元々タイマッサージは王様だけのものでした。タイの文化に関わる仕事ができるのはうれしいことです。日本に暮らすタイ人同士が力を合わせて、タイのすばらしさをもっと日本人に知ってもらって、タイのイメージをよくしていきたい、そう思っています。

タイ王国古式マッサージ キングスコータイ
〒101-0044 東京都千代田区鍛治町1-8-1 千代田K-1ビル7F
TEL 03-3256-5601
アクセス 神田駅(JR・東京メトロ銀座線)東口より徒歩2分
営業時間 12:00~翌06:00(最終受付04:00) 年中無休

http://www.kandamassage.com/