この書類の数々、家内がわたしと入籍し、1年間の日本在留ビザを取得するまでに必要だった、『タイ国内で取得した書類』である。あ、そう、と軽く流してはいけないよ。当事者にとっては艱難辛苦の連続だったんだから。 国際結婚とはいえ、手順さえわかっていれば、そんなに難しく感じないかもしれない。わたしも、諸先輩方に数多くの助言を仰ぎ、関係諸機関にも問い合わせ、入籍やビザ申請のためになにをそろえればいいのか、どのような段取りを踏めばいいのか、おおよそ把握していた。この時点では、どうにかなりそうだ、と高をくくっていたのだが、その書類を準備する段になって、不意につまづいたのだ。 上記した書類は家内に工面してもらうことになるのだが、さて、どうやって必要書類を具体的に伝えたらいいんだろう。どれもこれも、タイ語でどう表現したら食い違うことなく理解してもらえるのか、ぜんぜん見当がつかなかった。途方に暮れたよ。専門的な書類の固有名詞は、一般的な文法の枠外の、固有の言い回しで認知されることが多い。タイ語はもちろん、英語ですらうまく表現する自信がない。いやもう、辞書と首っ引きでそれらしい単語を連ね、むりやり理解してもらった。わたしは意地になってこの偉業を達成したが、日本語以外の言語にアレルギーに近い苦手意識を持つ多くの日本人は、この過程であっさりと挫折するはずだ。手続きの煩わしさの多くは、その書類をそろえる煩わしさである。誌面の都合でここでは割愛した日本側の書類まで含めると、溜息を連発しそうになる。 しかも、日本人が簡単に考えがちな書類のいくつかが、タイで入手するのがけっこう大変だったりする。具体的には出生証明書や独身証明書、結婚要件具備証明書である。家内の出身地の役場まで本人が出向かないと、発行してもらえない。地方出身者にとっては、大きな負担だ。 これが、微妙な落とし穴だったりする。 わたしと家内の場合、それは両国での入籍が終わり、総務省入国管理局に在留資格認定証明書の発行申請をかけたところで姿を現わした。事前に必要書類は入国管理局のサイトで確認し、さらに電話でも問い合わせ、過不足なくそろえて提出したからオッケイ!――などとふんぞりかえっていたのがいけなかった。申請書提出からおよそ1ヶ月後、不意に入国管理局から、タイで発行された結婚証明書と家内の出生証明書を追加で提出するようにとの通達が郵送されてきたのである。その書類、わたしの手元にはない。しかも提出期限は2週間後。そのためだけに家内は急いで実家まで夜行バスで往復し、証明書を国際郵便で日本に送らなければならなかった。 入籍の手続きで出生証明書が必要だったから、その時点ですでに一往復していた。追加提出の可能性があるとわかっていれば、そのときにもう1通発行してもらい、時間とお金を浪費せずに済んだ話だ。理不尽さに怒りが込み上げてくるほど、入国管理局や領事館相手のやりとりでは、事前にアナウンスのない後出しジャンケンのような要求が多い。 ぜひ覚えておいてほしい。入手の面倒な書類は、予備も含めて3通は発行してもらうようにしよう。それで、あらかたの無駄が回避できる。それに、不意討ちで要求された書類をすっと提出できる爽快感は、なかなかのものだと思うぞ。
©2002 wai wai THAILAND. All Rights Reserved. 写真および文章の無断転載を禁じます。